パティシエになりたかった

予備校生活二年目に突入していたころ,親のひとからは散々
「無理して大学なんか行くことないんや.今度失敗したら
調理師になれ」と言われてました.ねぎらいではなくむしろ
脅迫めいて.おまえはもう駄目だ無理だ無駄だ,とかいろいろ
言われて育ったものですよ.昏い青年時代でございました.

しかし炊事をすること自体に抵抗感はなく,むしろ台所は
好きな空間でした.両親のひとは料理を作ることで生計を
立てていて,なおかつ多忙なため家に帰ってもひとりである
ことが多く,自然と食べたい物は自分で作るようになって
いきました.家にある素材を使って,クッキーを焼いたり
プリンを蒸したり,そしてそれらを家人に振る舞ってみたり.

親のひととは仲が良いとは言えないのですが,お菓子作りを
していた時の思い出はなぜかなごやかなものばかりです.
そういえば幼稚園の頃,大きくなったらケーキ屋さんに
なりたいとか書いていた憶えがあります.お菓子は心を
なごませてゆるませてくれる不思議なものかもしれません.

そして今親のひととは離れて暮らし,料理ができるところを
買われて居候の身分に落ち着いています.こんなところで
芸が身を助けるとは思いませんでしたが,このままそっと
フライパンを振ったりオーブンの火加減を確認しながら
生きていくのもいいなあと思っています.もちろんいろいろ
外で働かなくては不都合も生じるのですが,それがなくても
台所にいればなんとかなる,という妙な自負もあります.

もしぼくが進学をあきらめていたら,どうなってたのかなあ.

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